前作6mAMハンディ機と同じ基板を使い、送受信回路だけを生かして簡略化したAMトランシーバを半透明ケースに収めました。 中が見えて電子工作キットみたいですが、玩トラ級ではなく実用機(のつもり)です。 タイトル写真はヘリカルアンテナ(全長23cm)を取り付けたところです。 【計 画】 ・バンドモード 50MHzAM 2CH水晶切替(JR3KQF局頒布品使用) ・形 状 ハンドヘルド形、外部および直付けアンテナを使用しPTTは本体のみ ・送信部 3ステージ構成 出力100mW以上 マイク内臓 ・受信部 IF455kHzシングルスーパー、スピーカ内臓 ・前作ハンディ機で作った基板を流用する ・RF-AGC、スケルチは不要 ・S/Poメータは必要(基板上のメータ回路を使用) ・アンテナ端子はBNC ・ケースは部品が収まる範囲で小さく薄形の物を探す ・スピーカは薄型の物を現物合わせで探す ・アンテナは入手できた短い物を使用する 【回 路】 電源を6Vにしましたが送信回路、変調回路は前作そのままとしました。 もともと6Vで使っていた回路なので問題ありません。 アンテナ切替は簡略化のためPTTスイッチの接点で直接切り替えます。 送信部、変調部への電源はPTTスイッチ経由で送信時のみ供給しています。 受信ミキサ注入部の回路を部品点数の少ないJR3KQF局の回路に変更していますが、こちらも元が6V動作でしたので他は変えていません。 受信部全体の電源は受信時にPTTスイッチ経由で供給しています。 RF-AGCは今回は実装しません。 シングルスーパ構成で受信系のゲインが少ないのでRF-AGCが無くても割合大きな入力に耐えられたのと、アンテナ切替を接点にしたのでアンテナ切替にPINダイオードが必要なくなったためです。 運用上S/Poメータは残したかったので、基板上のエミッタフォロワ回路を通して振らせています。 下の回路図は最新のものです。 クリックすると拡大します↓
【実 装】 回路は前作ハンディ機の簡略版ですので、前作基板に送受信部だけ実装して使用します。 ケースは実用的で上手く収まるものが在るかがポイントでした。 始めは金属製を考えましたが市販で適当な物が見つけられず、作るのも面倒なので樹脂ケースを探して無印良品で丁度良い大きさのポリプロピレン製筆箱を見つけました。 樹脂製はシールドの点で不安がありましたが、前作もABS樹脂製でしたし、手ごろなサイズのハンディ機になりそうなので使ってみることにしました。 カタログの寸法では余裕で収まるはずでしたが、実物にマウント済基板や操作部の部品を並べてみると、樹脂の厚みや反りで内寸が小さく平面的には収まるものの高さ方向の余裕がありません。 基板上のスピーカ下になるケミコンを小型品に代えたり横に寝かせてマウントするなどの工夫で40φxt=5mmのスピーカーを取付けることができました。 使用した基板は作った金属製フレームの内側にはめ込んでハンダ付けして取り付ける構造のため取付け用のネジ穴がありません。 基板の保持とハンダ面のクリアランス確保のため、長手方向の両縁に5mmx80mmx1.6tの生基板を接着+ハンダ付けし、下向きコの字の構造としました。(下図参照) これで基板ハンダ面からケースまで5mm-1.6t=3.4mm確保しています。 基板の固定はケースと基板の間に5mmx80mmの生基板をもう1枚挟んで動かないようにしています。 基板を外せるように接着はしていません。
接着しなくて良さそうなので、そのままにしています。 メータ、スピーカ、マイク取付筒はケース蓋に穴あけした後に接着しています。 スピーカが薄型のため、特にスピーカ穴のバリがコーンに触って音がビらないよう気を使いました。 今回使用したメータ(ラジケータ)は以前入手して持っていた物です。 ダイソー製電池チェッカのメータも電気的には使えましたが、今回の基板との組合せでは少し大きくて収められませんでした。
【調 整】 まず基板単体で通電し、調整でピークがとれることを確認してケースに組込みました。 やはり実績のある基板は楽です。 ケース組込後、測定器につないで各部の調整を行いました。 ・送信初期調整 発振コイルはコア抜け側のピークから奥へ少し戻した位置にしています。 ドライバとファイナルのコイルはピーク調整ですが、経験的にはどちらも奥側のピークが具合が良いようです。 次にLPFのトリマとファイナルコイルでピークを取り直します。 LPFは50Ω系で使う限り一度ピークを取れば触らなくて大丈夫でした。 ・送信変調時調整 変調をオーバー気味に掛けながら異常発振しないようにファイナルコイルを調整します。 ピークから少しずれる場合もあります。 次にドライバコイルを変調ピークの伸びが最大になるように調整します。 さらにファイナルコイルを再調整して終了ですが、異常発振がある場合はドライバとファイナルの相互調整になります。 スペアナが無いと異常発振が判り難いですが、調整に伴って送信パワーが急に変化する、モニタの受信音が濁る、隣接周波数への被りが大きいなどで、ある程度判断できます。 異常発振しない点が見つかったらオーバーモジにならないようにマイクゲインを下げておきます。 ・受信調整 発振コイルは送信側同様にコア抜け側のピークから奥へ少し戻した位置にしています。 次に信号を受信してRFアンプ2箇所とIFTのピーク調整を行って終了です。 ここまでの調整で自宅のアンテナでは問題なく使えるのですが、アンテナを直付けする場合は再調整が必要になる場合があります。 今回は主に使用する予定のボトムロード型ショートアンテナ(記事最下段の写真)を取付けて再調整を行っています。 ・アンテナ付送信調整 測定器で拾う電圧が大きくなり異常発振しない位置に、ファイナルコイルとLPFのトリマを再調整しました。 終段のQダンプ抵抗は不要でしたが、良好に動作する調整範囲が狭いので丁寧な調整が必要でした。 ・アンテナ付受信調整 信号を受信しながらRFトップのコイルだけピーク調整しました。 以上の調整の後、測定器につないでデータ取りを行いました。 調整状態が50Ω系でのピークとずれていますので、送信出力、受信感度とも低く出ますが異常な動作はありません。 高調波は規制値内、調整後の送信音質は良好です。 受信について、樹脂製ケースなので外来電波の直飛び込みを心配しましたが、アンテナを外すと意外に外来信号が聞こえませんので実用的にはOKでしょう。 基板単体に比べて組込み後に受信感度が下がりましたが実用範囲ですのでそのままとしています。 【測定結果】 以下が調整後の測定結果です。 送信系 CH1 出力123mW 周波数50.54930MHz 高調波-20dBm(10μW)以下 CH2 123mW 50.59904MHz 同上 消費電流 無変調時80mA 音声変調時約140mA DC6V時 いずれもショートアンテナで調整した状態でパワーメータに つなぎ変えた場合の出力です。 ダミーでピーク調整した場合の出力は154mWでした)
受信系 CH1 S/N10dB感度+9dBu.EMF(1.4μV) 1kHz30%変調にて CH2 +9dBu.EMF(1.4μV) 〃 消費電流 無音時 15mA 変調信号受信時 約50mA DC6V時 寸 法 縦184(200) x 横 64(77) x 厚 25mm 本体部、()はツマミを含む 重 量 310g(単三4本、ショートアンテナを含む) 【使用アンテナについて】 今回使用したショートアンテナは全長16cm、52MHzと表示があるだけでメーカー不詳です。 同じく52MHzと表示のある全長23cmの52MHz用ヘリカルアンテナと差し替えて問題なく使えました。(タイトル写真) コネクタと52MHzのラベルが同じなので同一メーカーの様です。 同じヘリカルですがピコ6用ヘリカルアンテナはそのままでは使えませんでした。 測定してみると52MHz用2本は表示どおり52MHzでSWRも落ちて、なかなか優秀です。 ピコ6用は共振点48.5MHz付近でしたので、そのまま差し替えで使うのは無理だった様です。 |
【製作を終わって】 今回は動作上の心配より適当なケース探しと実装が鍵でした。 無線機で半透明ケースは初めてでしたが、電子工作の様に中が見えるのが面白くて気に入っています。 このケースは安くて加工が容易ですし開閉しての調整も楽にできまし、単発品ではないようなので今後も使えそうです。 実装ではスピーカの取付け場所が問題でした。 当初30φだったのですが音が悪く、40φx5tに変えたためFCZコイルのあるところには取付けられなくなってしまいました。 幸い電解コンデンサを低背形に替えることで取付けられる場所があり、納めることができました。 今回こだわって短いアンテナやラジケータなど店頭に無い部材を集めたので部品集めには約3ヶ月掛かりましたが、今回の大きさと重量ですと持ち歩いても負担にはなりません。 構造的には上手く収まって満足しています。 電気的な性能ですが、受信は外部アンテナをつなぐと強い信号が被りますので、主にホイップアンテナなどで運用することになりそうです。 送信音質については、前作と比較して差は無く良好とのレポートを頂きました。 電源電圧を下げたことによる大きな影響はなかったようです。 LA1600など半導体が次々と生産中止になっていますので、この構成で作れるのは長くありません。 今後どんな素子が入手できるか気になるところです。 |
L=16cm ショートアンテナ装着 | 手で持つとこんな感じ | 側面 持ちやすい厚みです |