PARTNER P-108Aという80chCB機(AM)のジャンク品を入手したので、AMつながりということで修理して50MHzに改造しました。 CB機の中でも40を越えるチャンネル数を持つセットは世界中どこも合法運用できませんので、どんな電波が出ているか謎です。 この機種は変調トランスが大きく作りも好感が持てましたが、やはり近接スプリアスがいくつも出ていて、設定チャンネルによっては-30dBc未満という状態でした。 50MHz化改造では送信ミキサ部分を作り直して近接スプリアスを減らすことができました。 それにしても重い・・3kgあります。 2012/7 運用周波数を50.00〜50.99MHzまでさらに拡張しました →改造記事はこちら 【ご注意】送信可能な27MHz高出力機は、アンテナ等を接続すれば容易に 送信できる状態で設置すると、使用しなくても法令違反となる 場合があります。 改造後、保証認定により免許申請を行ってださい。 改造による破損・不具合等の責任は負いませんので、自己責任 で実施をお願いします。 【その1】 VXO化50MHz改造 CB機のデザインを生かしたいのと、6mAMでは10kHzステップで運用されることが多いので、連続可変ではなくVXOによるプリセット方式送で6m化改造しました。 1−1 周波数構成 この機種は共通発振の37〜38MHz台から10MHz台を引き算して27MHzを発生するクリスタルシンセサイザ方式です。 共通発振は9個、10MHz台は送受455kHz差がある各5個の水晶で構成されています。 この周波数構成は受信第1IFが送信局発と同じ周波数の10MHz台になりますので、イメージ受信周波数が上側の48〜49MHz付近になります。 受信部はRFアンプの共振回路を2箇所変更するだけで49MHz付近が受信ができますので仮調整が容易に行えます。 送信側は37MHz-10MHzのミキサ以降が4段のストレートアンプになっていますので、ここは全ての共振回路を50MHzに変更することになります。 最終段のLPFも変更しました。 IFアンプ、局発回路は流用のためオリジナルに近い周波数としました。 送信局発10.700MHz、受信第2局発10.245MHzとし、共通発振は40MHz付近が必要なので20MHz VXOの2逓倍としました。 チャンネル毎に水晶を特注した方が回路は簡単ですが、費用が安くて調整だけで周波数の変更ができるVXOを採用しています。 この周波数構成は実績のあるQRP-AM機'FEMTO'からの流用で、各水晶は既製品で揃います。 FEMTOの記事はここを→クリック 1−2 補修・改造内容 (VXO方式ブロック図を併せて参照ください) できるだけ元機の回路を生かしながら実用機を目指しました。 シロウト作業で綺麗な出来ではありませんが、ケースのカバーは汚かったので再塗装し、パネルは文字が消えかけていましたのでインスタントレタリングとクリアスプレーで補修しています。 下の写真で上段中央のA/B/Cと表示された3つのスライドスイッチですが、補修時点では用途が未定でしたのでこのような表示になっています。 最終的には A:オーディオALC ON/OFF B:ノイズブランカ ON/OFF C:チャンネルグループ High/Low に使用して用途と表示の関係が違和感無く収まりました。 電気部品としてはチャンネルSW、スライドSW、LED、電解コンデンサの一部を交換しました。 ・スライドSWに接触不良があり分解清掃 ・電解コンデンサ、特に変調器電源回路のものはマイクゲインを絞 ると発振する影響があり交換 ・送受表示の赤・緑LED不点灯 交換 ・チャンネルSW接触不良 修理が難しく廃棄 現在の6mAMではチャンネル数が少なくても大きな支障はなさそう なので6ch実装に決め、既存SW取付金具を加工して4回路6接点 ロータリSWを取付けました。 受信部はRFアンプ前後のコイル2個をFCZ10S50に交換しました。 50MHz化により若干感度低下がありましたので、第1ミキサのトランジスタも高利得の2SC1906に交換しています。 またアンテナ切替はリレーレスでしたが、送信への影響が出たためリレー切替に変更しています。 ノイズブランカは23MHz付近を受信しているようです。 実験の結果、入力を50MHz受信部とパラにしても影響が無かったので、無改造で使用しました。 50MHzの近接信号で煽られることも無く快適に働いています。 送信系は原発振を漏らすと強いスプリアスが出る可能性があため、既存ミキサは使わずにVXOユニット上にDBM(ダブルバランスドミキサ)を新設しました。 DBM出力は1段増幅した後、元の送信ミキサの直後に注入しています。 送信部共振コイルは巻き方が特殊だったり巻数がもともと少ないなどで、原則そのまま流用しましたが2箇所変更しています。 プリドライバ負荷側をFCZ10S50コイルに交換してリンク出しに回路変更、最終段の空芯コイルは撤去しLPFを別に追加しました。 流用して50MHz化する部分は共振コンデンサ(耐圧の関係でディップマイカ)の変更で対応しました。 トランジスタは本来2SC380-2SC2086-2SC2166-2SC2098の構成ですが、50MHz化でゲインが不足しますので2SC1907-2SC1957-2SC2166-2SC1307に変更しました。 終段は本来50MHzでも使える石なのですが、入手時に某メーカー専用の石が付いていました。 そのままでも使えそうでしたが、データが無いので手持ちの2SC1307に交換しています。 共通発振部はVXO+DBM基板として新規に製作しました。 一般にクリスタルシンセサイザは高レベルスプリアスをばら撒いていることが多く、本機も元の状態では最大-30dBcもスプリアスがあり、既存のミキサを使うのは諦めました。 単にPLLをシフトしたり共通発振周波数を上げて28MHz改造する記事がありますが、どんな事になっているか気になるところです。 今回は周波数逓倍部に3段同調+トラップとDBMミキサでスプリアスには留意しました。 トラップは実験で原発振x3の60MHzが抜けるとスプリアスに影響が大きいことが判ったため追加したものです。 原発振20MHzVXOを2逓倍した40MHzを受信第1局発とし、送信時は本体の送信局発からの10.700MHzを合成して50MHzを作ります。 10.7MHzの共振回路もスプリアスには大きく効いています。 始めにVXO水晶の直列コンデンサを切り替えて6ch出す方式を実験しましたが、異常発振するので徐々に減らしていって、VXO1回路あたり2ch切替に落ち着きました。 実装はVXO3回路とし50.50/50.53/50.55/50.58/50.60/50.62MHzをの6chを設定しています。 現在のAMの状況では、なんとか足りるでしょう。 今回の水晶は可変範囲が狭く、無理に合わせたこともあって周波数が変動しましたが、AMなので何とか使えるというレベルでした。 表示部は周波数の100kHz、10kHzを直読表示とし、元機の表示制御回路を改造して流用しています。 今回の改造方法では100kHz台の'6'の字体が既存LEDドライバSN7447が表示する'b'形ではなく、SN74LS247のaセグメントの横棒がある字体です。 今回の設定周波数には1位に'6'がありませんので交換しなくても問題ありませんが、交換する場合はSN74LS247にしておくと将来拡張したときに字体が揃います。 表示用7セグLEDも古くて互換品が入手できないため、壊すと表示部の基板から作り直すことになりますので注意が必要です。 私はいつの間にか壊していて、ユニバーサル基板で作り直す羽目に・・ TLR347T相当品を2個並べてうまく収まりました。 この機種は基板パターンがとても判りやすく、部品も昔の大きいものですので作業は容易でした。 元機の本体回路図はここを →クリック 本体改造回路図はここを →クリック 本体部品配置図はここを →クリック VXOユニット回路図はここを→クリック (表示部改造回路図含む) 1−3 改造結果 改造した結果は次のとおりです スプリアス数値・写真を再調整後のデータに入れ替えました。09/4/28 受信感度 -4dBu.emf(0.32uV) @S/N10dB 1kHz30%変調信号にて けっこう良い感度ですので、後日強信号対策として 第1IFに3端子クリスタルフィルタを挿入しています →4項をご覧ください 送信出力 5W(無変調時) 段間の回路変更等で7W出ましたが終段部コイルのコ ア発熱が大きいので少し抑えた回路にしました。 3W以下では綺麗な音でプラス変調になります。 ピークでは12W近くになりますのでこんなものでしょ うか。 スプリアス 近接スプリアス -60dBc 発生モードは次の式と推定しています。 -1.5MHzは19.9x3-10.7=49MHz +1.5MHzは19.9+10.7x3=52MHz これ以外の近接スプリアスは調整で消滅しました。 高調波 -59dBc 第5次高調波 *測定系への飛込みが少し残っています ユニット内に空芯コイルのLPFを入れたら、かえっ て高調波を拾いましたので、トロイダルコアを使っ た定K形3次のLPFを作って取付けました。 発熱等 終段部コアがやや発熱しますが長話しなければ持ちそ うです。 大型の放熱器のおかげで、トランジスタはわずかに 温まる程度です。 消費電流 受信時 0.4A 無信号時 送信時 1.6A 最大出力、無変調時 2.4A 最大出力、変調時max DC13.8V供給にて |
高調波 5次がやや多い | 近接スプリアス |
VXO/MIXユニット 左半分がDBM、右がVXO | 水晶基板の代わりにVXOユニットを取付け |
【その2】 PLL化改造 VXOの周波数変動が大きいので気になっていたところ、たまたま金石舎製MCXO-012Aという古いCB用PLLユニットを入手したので、続けてPLL化改造を行いました。 このPLLユニットのVCO発振周波数はクリスタルシンセサイザの共通発振と同37MHz付近ですので、40MHz付近に改造して先に製作したVXOから2逓倍回路までを置き換えることにしました。 PLL化改造のブロックダイアグラムはここを→クリック 周波数はVXOに使用したチャンネルSWと表示回路を流用して6chとし、周波数設定はダイオードマトリクスを組んで設定しています。 2−1 PLLユニットの周波数構成 このPLLユニットは37MHzのVCO信号と39.57MHzの水晶発振の差分をプログラマブルデバイダに入力する構成です。 今回はPLLユニットの局発水晶をそのまま使ってVCO発振周波数を局発の上側40MHz付近に変更することにしました。 VCOの制御方向が逆になるため小改造が必要ですが、新たに水晶を発注すると時間が掛かりますので、とりあえず改造することにしました。 改造により分周比17〜63のとき39.74〜40.20MHz(10kHzステップ)が得られ、運用可能周波数は以前のVXO方式の範囲より広い50.44〜50.90MHzをカバーできます。 2−2 PLLユニットの改造(回路図はここを→クリック) PLLユニットの改造は次の箇所になります。 (注)その後、近接スプリアス対策のためループ局発水晶と分周比の変更 (3-4項参照)を行っています。 3-4項による近接スプリアス対策を行う場合も2-2項1)及び3)の改造を 先に行ってください。 また3-6項の運用周波数拡張を行う場合 は、2-2項1)および3)と3-4項の 近接スプリアス対策を先に行ってください。 1) VCOバリキャップ周辺 元の回路は電圧が上がると周波数が下がりますので、電圧が上がると周波数も上がる ように回路変更し、バリキャップとパラのコンデンサも10pFから5.6pF (マイカコンデンサ、 5または6pFで可)に交換します。 PLLのレファレンス漏れが多かったので、バリキャップにつながる10kΩのところに0.039uF のフィルムコンデンサを追加しています。 変調をかけた時に10kHz離れた付近での声の聞こえ方が少なくなりました。 この部分は一見簡単なCR回路なのですが、なかなか手ごわいPLLのキモです。 *09.5.5更新 さらに気を付けて送信音を聞くと、小さくピーという音が聞こえていました。 変調器を止めても変化が無いので、PLLのレファレンスリークが残っていることが一因と判 断し、ループフィルタをさらに調整したら聞こえなくなりました。 回路図と内部写真、波形写真を最新のものに更新しました。 |
コンデンサ追加前 レファレンス漏れの山が多数 | 追加後 裾がだいぶ綺麗になっている |
2) 分周比変更 プログラム入力最上位桁(IC4ピン)が電源に吊られているのを切り離します。 *3-4項の水晶変更を行う場合は改造不要です。 3) VCOコイル交換 コイルはコアを抜き方向で調整するため、オリジナルのままではケースが閉られなく なるのでFCZ10S50に交換しました。 FCZ資料によると温度特性が悪くVFOには向かないそうですがVCOには十分使用で きます。
2−3 PLLユニット実装
これはスピーカーを上の写真右上に見える小型スピーカに替えて対処しました。 VXOユニットは不要になったVXO、ダブラ、60MHzトラップを撤去してダブルバランスドミキサ部だけを使用し、PLLユニットからの出力はバランスドミキサ入力の40MHz3段同調をリンク入力に変更して接続しています。 部品を撤去した跡地はマトリクス基板の設置場所になっています。 PLLユニットの出力レベルがVXOのときよりかなり大きいのでDBM入力への直列抵抗で調整しましが、少し高めだったので送信出力もやや増加しました。 2−4 PLL化後の調整結果 *09/05/01、05/06、05/08更新 受信感度には変化無く、送信スプリアスに影響が出ました。 PLLに起因する新顔の近接スプリアスが登場してきました。 周波数を見るとVCO周波数とPLLループ局発の差と思われ、PLLループ局発を下げて差を大きく取れば、このスプリアスを小さくできると考えられます。 具体的な対策は7項を参照ください。 送信調整では良い調整点を見つけ出すのに苦労しましたが、送信部を再調整し最近接スプリアス以外は-61dBc以下にさがりました。 周波数安定度と可変範囲の広さでは当然PLL、近接スプリアスではVXOが有利という結果です。 変調部は余裕があり、マイクゲインをかなり絞っていますが最大出力まで十分な変調が掛かりました。 送信部 出力 5W 変調時尖頭出力 約12W スプリアスレベル(最大出力時)下記写真参照 近接 ±200〜300kHz -56dBc 高調波 4次 -61dBc その他 -61dBc以下 周波数誤差 +120Hz PoメータはパワコンMAX(5W)でS9位置に調整済 受信部 2ndミキサのゲイン上げ、Sメータの感度下げで、Sメータの振れ改善 S/N10dB感度は変化なし S/N10dB感度 -4dBu.emf (=0.32uV) 1kHz30%mod. (参考)IC-706mk2のAM感度仕様値 1uV(=+6dBu.emf) Sメータ指示 振れ始め+ 0.0dBu.emf S1 + 2.0 S3 + 5.5 S5 +12.0 S7 +20.5 S9 +27.0 その他 送信時消費電流 1.7(無変調時)〜2.4Amax @DC13.8V 受信時 〃 0.4A @DC13.8V |
高調波 測定系を見直したら-61dBc取れていた | 近接スプリアス キャリヤ直近のものが最大 |
5W出力無変調時 | 5W出力1kHz95%変調時 ピーク出力不足 |
5W出力1kHz80%変調時 | 5W出力1kHz50%変調時 |
3W出力無変調時 | 3W出力95%変調時 |
【その3】 機能・性能の改善 基本的な改造が終わりましたので、送受信特性改善とチャンネル拡張のため追加改造を実施しました。 3−1 受信第1IFにフィルタ追加 SSBやFMなどバンド内の強力な信号の影響を軽減するため、第1IFに3端子クリスタルフィルタを取り付けて狭帯域化しました。 中心周波数10.7MHz・帯域幅15kHzのものです。 第1IFは2個のIFTで構成されていますので、その間にフィルタを接続することにしました。 できれば2個シリーズに取り付けたかったのですが、取付け場所を確保できなかったので1個だけ使用しています。 右下写真の中央下側の2個縦に並んだコイルが第1IFのIFT、その右に見えるHC-18/uタイプの部品が3端子クリスタルフィルタです。 改造前の周波数構成では第1IFは最小約60kHzの幅が必要でしたので、3端子フィルタ1個だけでもだいぶ改善できたはずです。 改造後のSSBやFMからの影響ですが、さすがにローカル局が送信すると影響を受けますが、通常のEs程度の状況なら実用上問題なく運用できるようになりました。 |
第1IF付近の回路図 | 10.7MHzIFT(中央下2個縦)とXF(IFT右 水晶型) |
3−2 AFローパスフィルタ追加 新スプリアス規則に対応するため、変調器にLCローパスフィルタを取り付けました。 改造図はここを→クリック 設計fc3kHz,Zo=1kΩの3次バターワースフィルタを3段重ねたLCタイプです。 このLに変調トランスからの漏洩磁束が絡み、変調回路が発振するのを心配していましたが、予想通り発振したので対策して実装しました。 今回の対策は次の3点です。 1 コイルの巻き始め方向を揃えないようにする 誘導電流の一部がキャンセルされて約1/3になるはず。 2 フィルタの挿入場所を後段にする ループゲインが下がる様、挿入場所をマイクアンプ直後から 次段のAFアンプ後に変更。 3 フィルター出口に抵抗設置 受信時に影響して若干発振するので抵抗を入れて対策。 筐体が小さいと結合量も大きいので、さらにコイルの軸方向を細かく調整して影響の少ないところを探す、電磁シールドするなどの対策が必要になるかもしれません。 フィルタ単体特性は実測2300Hzで-3dB,3kHzで-23dB,4kHzで-51dBで、帯域が少々狭いですが使える範囲に収まりました。 後で気づいたのですがキャリブレーション社に同じ定数の部品キットがあり、単体の特性は今回作った物とほとんど同じでした。 コイルの形状からするとキャ社製のほうが漏洩磁束の影響は少ないように思えます。 このフィルタを実装して音を聞くとSSBの様な雰囲気の音です。 低周波での帯域制限なんてマトモに考えなった時代のAMとは別世界の音になりました。 |
実装した送信AFフィルタ | 接続箇所 右側から出て左に戻ってくる |
3−3 終段コア発熱対策 終段部T22コイルのコアが発熱し、長時間送信が不安なのでコイルを空芯に変更しました。
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3−4 近接スプリアス対策 対策済回路図はここを→クリック 近接スプリアス対策のため、先に改造したPLL内のループ局発周波数をさらに低い周波数に変更しました。 VCOと局発の差を大きくとることで近接スプリアスを遠ざけて同調回路で切ることが目的です。 ループ局発周波数を低くするのに合わせて分周比を大きくする変更も行いました。 まずループ局発を39.570MHzから38.200MHzに交換します。 38.200MHzの水晶は元機から撤去したものを再利用できますので、別に手配する必要はありません。 局発の変更に合わせて分周比'128'の桁(h)をHに戻しましたので、分周比128〜255(運用周波数50.180〜51.450MHz)が設定可能になりました。 変更ブロック図→クリック 実際には'32'の桁(f)をH、'64'の桁(g)をLに固定して分周比160〜191(50.500〜50.810MHz)の10kHzステップ32chで使っています。 スイッチの下位桁が全てLのときVCO周波数が39.800MHz(運用周波数50.500MHz)になりますので、現在の実装6chの場合には2回路のスイッチ接点の組合せだけで制御ができる都合の良い組合せとなり、先に作ったマトリクスが不要になりました。 この改造でスプリアス成分が1.6MHz以上離れましたので、途中の同調回路の効果で-69dBcになり13dBの改善です。 改造後の調整としては、新たに取り付けた水晶の誤差でVCOの周波数が少し変わりましたので本体基板の送受局発を調整して合わせました。 最終的には目的周波数に対して+100Hz以内に収まっています。 ±1.6MHz付近のスプリアスについてはPLL出力とDBMの間の3段同調回路を再調整して簡単に落とすことができました。 送信時の高調波と受信感度については変化ありません。 これで近接スプリアスも解決です。 |
最近接は±1.6MHz付近-69dBc | ±500KHzの範囲に目立つスプリアスなし |
3−5 変調度向上対策 平均変調度を上げるため、TA2011S(ALC付マイクアンプ)を追加しました。 このICはアタックがやや遅いですが、リミッタ動作をしますので、今までも自作品に使っています。 今回は低インピーダンスのダイナミックマイクに合わせて回路と定数を設定しました。 リミッタが効いているときのユニット出力は600mVpp(出力開放時)程度になります。 周波数特性は低音がややカットの-1.8dB@300Hz、-3dB@240Hzで、高音側は10kHz以上延びていますが後段のLPFで決まりますので気にしていません。 ICはマイクアンプを持っていますのでマイクコネクタと本体基板のマイク入力との間に挿入して使用します。 ユニバーサル基板で作ってマイクコネクタ後ろの側壁に両面テープで貼り付けました。 ALC機能のオン/オフは50MHz化改造時に使わなくなったスライドスイッチ(トップ写真,メータ右隣の'A')を利用しています。 ALCオフではタイミング回路をショートしてリミッタ動作を止めるとともに、マイクゲインを落として入出力レベルが同程度になるように設定しています。 ALCオンではリミッタ動作で過変調を防ぐとともに、マイクゲインを上げてリミッタが働く範囲を増やすことで音声の平均レベルを上げるように働きます。 初めに実装したとき変調器に高周波が回り込み、ハウリングから弱い発振を起こしたり、パワコンを絞った時にはマトモに発振しました。 分割チョーク等で対策した結果を下記回路図に盛り込んでいますが、実装状態によっては別の対策が必要になるかもしれません。 グランドの取り方も重要で、今回のセットは一点接地が有効でした。 ユニット部分の回路を下図に示します。 この回路は送信時だけ電源を加えると立ち上がりに時間が掛かったので、常時給電としています。 電源は当初共通系の12V、その後3-7項でPLL用に増設した9V三端子レギュレータ経由に変更して供給しています。 本体との接続は下図をクリックすると表示します。 ブラウザの「戻る」ボタンで戻ってください。 調整はピークで過変調にならないよう、オシロスコープを見ながら本体基板のマイクゲインを調整するだけです。 ダイナミックマイクの出力が大きくありませんので、軽くリミッタが掛かる動作になり、聴感上はコンプレッサが効いているぞーという音ではなく少し声が大きくなった程度に聞こえます。 |
3−6 実装周波数拡張改造 PLL改造によりスプリアス対策もできましたので、実装周波数を増やす改造を行いました。 制御方法としてPICを載せるかとも考えましたが、ノイズ源を増やしたくなっかたことと6mAMの現状では必要な周波数範囲が比較的狭いので、ごく基本的なロータリスイッチ+コード変換マトリクス方式に落ち着きました。 ロータリSWは特殊な物は避けて容易に入手できる2回路12接点のものを使用し、操作パネルにあって未使用の2接点スライドスイッチ'C'と組合せた12ch×2グループ計24チャンネルに50.50〜50.73MHzを10kHzステップで実装することにしました。 既存の4回路6接点ロータリSWと交換になります。 周波数順ではグループ1に50.50〜50.61MHzとなりますが、よく使う50.62MHzを同じグループに入れたかったので50.50〜50.60+50.62MHzとし、グループ2は50.61+50.63〜50.73MHzになっています。 コード変換マトリクスはROMやGALを使えばスマートに作れますが、特別なツールを使わず、ハンダ付けだけで製作できるユニバーサル基板2枚の間にダイオードを挟む原始的構造で製作しました。 MTXはスイッチ入力24、出力12(PLL用5+表示用7)になりますが、実装場所の関係で12x12のマトリクスを2組重ねた構造にしています。 完成したMTXモジュールは下側に小基板をエポキシ接着剤で取り付けてベースを作り、両面テープで6ch用のMTXがあった場所にマウントしています。 MTX回路に合わせて表示回路の改造とPLL制御端子に論理反転(INV)を追加しました。 現在、動作上の問題は起きていませんが論理反転回路のB-E間の抵抗を手抜きしていますので、気になる場合は5kΩ前後の抵抗を入れておいてください。 回路図はここを→クリック *次項の送信音改善分も追記修正済 3−7 送信音質改善 *09.8.10追加 JST−245で送信音をモニターした際の、歪みっぽく、こもった感じの音質が気になっていました。 さらにチェックしていたところ、ゲルマラジオ式のモニタでは音質に異常ないので変調オーディオ系統の異常ではなさそうです。 受信帯域幅を切替えてみると、狭いほど音質が極端に悪くなる気がします。 次にFMモードで受信してみると結構マトモな音で聞こえます。 モニターに使っているJST-245は簡易型ですが同期検波ですので、キャリヤが振られると受信音質がかなり悪くなります。 以前にも某メーカー製ハンディ機がAMと言いながら、綺麗にFM変調が掛かっていて、AMモードでは音にならずに困った経験がありますし、受信帯域と音質の関係も矛盾がありません。 マイクで大声を出すとPLLユニットの電源電圧がテスターの針幅くらい変化しますので、VCOか水晶の局発が振られている可能性があります。 これ位でFMが掛かるの?という感じもしますが。 試しにPLLの電源端子に1000μFのコンデンサを付けてみると、AMの音質がやや良くなった感じです。 実験中にPLLユニット内の安定化電源のトランジスタを飛ばしてしまい、手持ちの適当な石に交換したところ、やはり変化が見られました。 やはり僅かな電源電圧の変化が周波数に影響している様です。 ループフィルタをいじった影響もあるかもしれません。 対策としてPLLの電源回路に9Vの3端子レギュレータを追加したところ、FMモードの受信音はほとんど聞こえなくなり、AMモードの受信音はこもり感が取れてスッキリした音質に変わりました。 対策した回路図は前項(10項)末をクリックしてご覧ください。 レギュレータを追記しています。 |
4 100チャンネル化改造 チャンネル切替スイッチの接点数の制約で24chしか設定できませんでしたが、ワンチップCPU(AVR)を使った制御ユニットを組み込んで100chチャンネル化しました。 ユニットの詳細と接続は"チャンネル制御ユニット"の記事を参照ください。 P-108A本体の改造は 1 既存チャンネル切替SWとMTXを撤去 2 7セグLED用デコーダドライバ 74LS247 既存+1個増設の信号取り出し 3 PLLユニットから上位2ビットの制御信号取り出し の3項目で、あとは制御ユニットとロータリエンコーダを組み込んで接続するだけです。 CPUノイズの受信への被りは、入出力線をまとめて分割チョークで挟んだら消えました。 制御ユニットにプログラムを書き込み ユニットには写真のように実装状態でプログラムを書き込めます。 制御ユニット右側にある黒い角型の分割チョークがノイズ対策用です。 |
拡張結果の確認中 99chでSGからの50.99MHzが受信できることを確認しています。 同様に00chで50.00MHzが受信できました。 |